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(職場に電話をして……)
インフルかもしれないんだよね、ちゃんと病院に行って検査して、必ず連絡してください。
ああ、仕事のことは何とかするから――とにかく連絡を必ず。あ、そうそう、昨日誰と一緒に仕事してたっけ。
……。
リーダーの台詞まで具体的に思い浮かんでしまう。
電話口の声は忙しそうで焦っていて、ゆっくりと話をしていられなくて、表面上は気遣ってくれている感じだけど、内心、ああ迷惑だなあ、一体どこでインフルなんか貰って来たんだよ馬鹿だなあ、などと思っているのが丸わかりだろう。
それから、行きつけの総合病院に行って待ち合いで待って――凄く時間がかかるのだ――げほんげほん、こんこんこんっ、嫌な咳をする汚れたジャージの人とか、意地悪そうな看護婦の尋問めいた質問とか――ええと、お熱はいつからですか、え、昨日、一昨日、どっちですか、具体的にどれくらい時間が経っていますか……。
あれやこれやの間でも、頭のどこかでは恋人からのメールを待ちわびている。
今か今かと携帯を気にしているけれど、一向に反応がなくて。
(辛い)
車を運転して病院まで行くけれど、その間、道は混雑していないか。
信号はいくつ。
それから病院の駐車場の空きがあればすぐに入れるけれど、なかったら……。
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