ぽちょん

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 じゃーっと飛沫をあげながら水はコップにたまった。  澄んだ水を、わたしはやっとのことで口にした。  このアパートの水道水は、伏流水が源である。たいそう良い伏流水だとかで、この水を使った葛切だの、めんつゆだのが、ここいらの特産品である。  普段使っているので、大して感じたことはないが、今日は妙に美味しく感じた。  するするっと冷たい透明なものが喉を通って体に収まり、じわじわと細胞に染みわたってゆく感じがした。  太古の昔から、空から降りてきて地に降り注ぎ、豊かな山から流れて川になって、その川もどんどん枝分かれして広がって行って……変なことを考えていた。熱っぽい頭では、突飛なことが浮かんではとりとめもなく消える。  今、わたしの中に溶けて行った水は、どれくらい昔の記憶を秘めているのだろうと思った。  わたしに届くまでの間、どこをどう旅して、時には生物の体を通って、あるいは再び天空に戻って再度降りなおして地上に注がれ――。
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