第2章

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 私は「渡辺岳」という過去を完全にフォーマットし、「嶋タケル」になったみたいでした。しかし10年間という嶋タケル時代の記憶が消えてしまった今、残されたのは何もない空っぽの渡辺岳だけです。そんな虚無感を成田さんに打ち明けました。 「嶋君、君は過去に一度だけスキャンダルを週刊誌に取り上げられそうになったことがあるんだ。男と不倫しているという内容だ。発表されていたら衝撃的なスクープになっていたよ。なんとか金で揉み消したが・・・・・・それは事実なんだ。君は嶋タケルになって結婚もしたけど、実際は女に全く興味のないゲイなんだよ。人間なんてそう簡単に変われるものじゃない」成田さんは慰めにならない言葉を掛けてきました。  要するにリオちゃんとの間に愛なんてまるでなく、2人の結婚は嶋タケルとして男らしく芸能界で生き残っていくための印象操作に過ぎないということなのでしょう。     
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