第2章

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 翌朝のことです。時差ボケのリオちゃんは早起きし、朝食を作っていました。料理が苦手であることはウィキペディアで学習済みです。私はというと、子供の頃から料理が得意でした。母が仕事から帰ってくる前に簡単な夕食を用意するのが習慣になっていたからです。  リオちゃんのおぼつかない作業を見ていると居ても立っていられなくなり、私はキッチンに飛び込んで手伝ってしまうのでした。それが失敗でした。 「どうしたの? 急に」リオちゃんは呆気にとられた顔になっていました。  痛恨の選択ミスです。黙って朝のニュース番組でも観ていればよかったのでした。反射的に女言葉を使ってしまうよりは幾分マシな失態だと思っていましたが、次の言葉を聞いた時に、取り返しの付かないことをしてしまったことに気付かされるのでした。 「・・・・・・料理なんてしたことないって言ってなかった?」 「いや、なんとなくやってみたくなったんだ」私は適当な言い訳を口にしていました。善意が常に人を喜ばせるわけではないのです 「そのわりには慣れた手つきなんだけど・・・・・・」 「そう?」という素っ気ないワードを台所に置き去りにして、背中に視線を感じながら居間に戻りました。シャワーを浴びる前で良かったと思えるくらいに、冷や汗をかいていました。
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