第3章

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 私は口を挟まずに黙って聞いていました。 「お前が芸能界に入る際に別れを告げた時、樋口は応援してくれたんだ。香川リオと結婚した時も特に反応は無かった。しかしお前が一条という名の男娼みたいな奴と不倫した時、突然俺達の前に姿を現したんだ。そして自分と過去に付き合っていたことを暴露すると脅してきたんだ」 「一条という名前だったんですね。でもどうやって樋口は不倫のことを知ったんですか?」 「そんなことまで俺が知るかよ。まあ、同性愛者のネットワークは狭いんだろうね。二丁目に出入りするなら、それなりの覚悟が必要なんだろ。見た目は男でも、中身は嫉妬むき出しの女ばかりなんだよ」 「僕はその時、どんな様子でしたか?」 「うろたえていたよ。でも樋口のことを憎んでる感じではなかったな。間に入ってきたのが例の記者だ。山本という名前だよ。クソに群がるハエみたいな奴さ。仲介人として名乗りを上げたんだ。早い話が金をよこせってことだ」 「2人に金を払ったんですか?」 「樋口は受け取らなかったよ。一条と別れるのが条件だったんだ」 「僕は一条という男とは別れたんですか?」     
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