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山本の体を上下に分断するまでに、30分近くの時間が必要でした。私が下半身を押さえ、成田さんは上半身を回転させて、腰椎をねじ切るのでした。
「やっと外れたな・・・・・・」
成田さんは山本の上半身の両脇に手を差し込むと、幼い子供をあやすように持ち上げ、空っぽの寸胴の中に押し込みました。
目と口を半開きにしたまま死んだ山本の顔を見て、その唇が私の過去の何を暴露した時の形になっているのかを想像していました。
「これでよし。さっそく溶かそうぜ」
苛性ソーダを浴びせられた死体は、白い湯気を立ち上らせていました。あれは魂だったのではないだろうかと、今も思っています。
成田さんは湯気を吸い込まないように鼻と口を手で押さえながら、溶けていく過程を楽しんでいるみたいでした。観察日誌を書く子供の目になっているのです。
私はというと床にへたり込み、吐き気を堪えながら泣いていました。無神論者なのに手を合わせる始末です。十年分の記憶が消えた乾いた脳に、グロテスクな情景が否応なく染み込んでいくのでした。
何もかも捨てて、誰も自分のことを知らない土地で静かに暮らしたい、そんな浅はかなで無責任な願望が湧き上がってくるのでした。成田さんが提案した「自分の顔を溶かす」という選択肢が、あながち悪くないような気がしてしまうくらいに、精神が混乱していました。
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