第4章

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 定食屋を出ると、銀行に向かいました。ATMでお金を下ろすと、残高の書かれた紙を永野に渡しました。 「え! こんなに持ってるんですか・・・・・・」 「これでも妻に慰謝料でガッポリ持っていかれたんだよ。半分以下になった」 「香川リオさんですよね・・・・・・再婚しちゃいましたよ」 「それは聞いてるよ。新人の受刑者が嬉しそうに話してた。他に何か知ってることある?」 「私は結構詳しいですよ。初めて嶋さんのニュースを見たのは10代の時です。登場人物に個性的な人が多いから、面白くて食い入るように毎日ワイドショーを見てましたよ。新聞や雑誌の記事はスクラップに貼ってました。会社に入ってからは、それもあってか私の担当になったんです」 「じゃあ樋口のことも覚えてる?」 「はい、もちろんです。元恋人ですよね。嶋さんが逮捕されてから、関係者のインタビューでテレビに頻繁に出るようになって、そのままタレントになったんですよ」 「嘘でしょ?」 「本当ですよ。あっという間にメディアから消えましたけどね。実力不足で」 「どこに住んでるかも分かるの?」 「もちろんです。会ったこともありますよ。ここから割と近いですよ」 「それはすごい」私は10年ぶりに笑った気がします。まだ笑い方を忘れていなかったので安心しました。 「嶋さんのお母さんにも会ったことあります」 「・・・・・・どうだった?」 「元気でしたよ。今は一人で暮らしています」 「そうなんだ」 「元社長の成田浩一さんは、獄中で自殺しましたけどね」 「それは知ってる」
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