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「まだ信用していない顔してるね」という成田さんの言葉に私は小さく二度ほど頷きました。
「よし分かった・・・・・・それじゃあ、あまり言いたくはなかったけど、俺と君の二人しか知らない秘密を暴露するよ。これで納得するはずだ」
一体この男は何を言うのでしょうか? ひた隠しにしている秘密は確かに一つだけあります。私にとって「秘密」という言葉は、それとイコールになっているくらいなのです。それは家族も知らないトップシークレットで、私以外に知っているのは、恋人の樋口だけです。どんなに優秀な占い師でも見破ることはできないはずでした。
「君はゲイでしょ」
成田さんはサラッと言ってのけました。無表情で引き金を引いたのです。その顔には人間が太古から捨てることのできないレイシズムの色は滲んでいません。
私の心拍数は跳ね上がっていました。樋口が勝手にカミングアウトして、私を道連れにしたのか? いやそんなことはありえません。
「さっき話していた樋口というのは、君の元恋人である樋口康介のことでしょ。覚えているよ。さっきは知らないふりをしたんだ。君は芸能界に入る時に、彼とは別れたんだよ。俺がそうさせたわけじゃない。自分からそうしたんだ」
「ふざけるな」と弱々しく罵倒するのが精一杯でした。私から樋口を振るなんてことは、家族を人質に取られてもすることはないでしょう。
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