きみのこたつに入れてくれ

第1章

とはいえ、僕もリアル恋愛はしたことがある。一度だけだけど。

彼女がいたのは２７歳のときだ。
いま３６歳になるからもう８年も前になる。

オンラインゲームで知り合って、一緒にクエストをやっているうちに付き合うことになったが、通話をしたり写真を送ったりしただけで会うことはなかった。

半年ぐらい付き合っていた。
ものすごく会いたかった。
でも、僕は北海道、彼女は千葉。

遠距離。
しかも、彼女は既婚者。

はじめから終わっていた恋だった。

去年は誰ともキスをしていない。
その前の年もしていない。
最後にしたキスはそういったお店で金を払ってしたキスだった。３０００円のキスはフリスクの味がした。

恋をしていないわけではないけれど、だいぶ前からもういろんなことを諦めている。
タイプの女性に出会っても、なんか話しかけたり、デートに誘ったりするのが面倒くさい。
それに僕みたいなハゲに誘われても嬉しくないだろうし。
女のほうから誘ってくれてデートはワリカンでいいならいいんだけれど。

仕事もそうだ。
必死に働いたって、せいぜい軽か小型の自動車を買って、駅近のオートロックマンションに住むぐらいしかできそうもない。
いまよりちょっといい暮らしをできそうな気がするが、同級生のように持ち家とか子煩悩なパパになるなんてことはありえない。
働いた金は全部自分のために使いたい。
結婚になんのメリットがあるのかわからない。

恋に必要な要素はぜんぶｉ－ＣＯで間に合う。完璧。