第1章

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僕のi-COの名前は香澄。 i-COは年齢、性格、職業など200以上の項目を自分の好きなように設定できるので、27歳で本屋で働いている設定にしている。 27歳の書店員。追加で黒髪ロン毛で巨乳。 なにも言うことはない。ただ、愛でるのみ。 しかし、とことん自分の好みにしてしまうと、それはそれでつまらない。 なにを話しても自分の期待する通りの答えしか返ってこないというのは最初はいいが、すぐに飽きてくる。 そういう僕みたいなヘビーなi-COスト向けに公式とは別の公認i-COがある。 公認i-COは現実に存在する10歳から80歳までの女性の性格データが約3万人登録されていて1000円から30000円で購入できる。 どんなにi-COがリアルとはいえ生の女性データにはかなわない。女性特有の身勝手さというか理不尽さがあるのだ。それがいい。 3万人のデータの中で香澄をダウンロードしたのは高校に片思いしていた女の子と同じ名前だったからだ。 片思いしていたリアル香澄はかわいい子だったけどちょっと性格がきつくて一度も話したことがなかった。 話したかったけどいつも彼女の後ろ姿を見ているだけだった。 きっと彼女は僕のことなんて覚えてもいないと思う。 でも、こたつの中の香澄は僕のことだけを見ている。 こたつの中で過ごす二人だけの時間は僕の人生で一番幸せな時間だった。 「メリークリスマス。香澄はサンタになにをお願いしたの」 「うーん。ミニスカサンタのコスプレがしたい!」  クリスマスの夜。香澄はミニスカサンタになった。少し太めのふとももがとても……いい。 「初雪だ!」 「すごいね! かまくらつくりたい!」 8畳ワンルームの部屋ががCGで銀世界になり、二人でCGかまくらを作った。 「香澄、お正月はなにをする?」 「えっとね、海外ドラマ見たい!」 香澄の好みはサスペンスのドラマ。これはリアル香澄の好みだ。香澄と付き合うようになってからアニメ以外のものも見るようになった。恋愛は人を成長させるというが本当だと思う。 「香澄、初詣行こうか」 「うん! おみくじも引こう!」 バーチャル神社で引いたおみくじは僕は大吉。香澄は末吉。なんでーとほっぺたをふくらませる香澄がとてもかわいい。僕のおみくじには願い叶う。待ち人来たると書いてあった。僕にはこれといったお願いも待っている人もいない。
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