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──目を覚ます。
否、目を覚ましたような気がする。と言うのも、見渡しても見渡しても当たりには一面黒々とした空間しか認識することが出来なかった。
─自分は今まで何をしていたのか。
どうも思い出せない。朝起きて、朝食のパンを齧り、だだっ広い家の天井を見上げて、埃を払い、それから、
ふと、自分の手が何かを握っていることに気づく。あまりに異質な状況に、ここまで気づくことが出来なかったらしい。
そっと腕を上げてみる。少しばかりの重量。気をつけつつ根元から触れてみる。ざらり、とした材質。
どうやら、これはカナヅチのようなもののようだ。
─では何故自分はこんな所にいる?
何故こんなところにいるのか。何故こんなものを持たされているのか。何もわからないまま、呆然と立ち尽くすのみだった。
自分以外の足音も、呼吸音も、何も聞こえない。
あたりには、ただ広がるだけの暗闇と、どこか気味の悪い空気だけが立ち込めていた。
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