夢想

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夢想

その日、わたしは夢を見ていた。 どこか知らない街の、知らない道を歩く夢を。 またそれは、歩いているというか、飛んでいるような、それはなにか意識がどこか遠くにあるような。 手には木でできた箱を抱えていた。材質は軽そうだが、何が入っているのかずっしりとした重量がある。ただし、夢の中ではそんなものは感じない。 空は灰色に霞んでいた。一面が雲に覆われたようだが、寧ろ雲一つない、元から灰色をした空に見えないこともない。 箱の中は依然静まり返っている。耳を当てて、聞いてみる。何も聞こえない。 ふと、頭上が暗くなる。 空は暗く、重くなっていく。 手元の箱を見つめる。返答はない。 箱を開けようと、すっと手を伸ばす。 箱を掴んだ時、わたしの後ろに金属製の凶器がちらりと見えた気がした。
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