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ーー彼女が訪れた土地には、2度と雪が降らなくなる。
そんな伝承が昔ばなしとなり、絵本となり、子供なら誰でも知っているような物語りが。
俺の住む村、○○では恐ろしい呪いとして忌み嫌われていた。
曰く、雪原のような白銀の髪を持ち、
曰く、結晶のような透き通った瞳を持ち、
曰く、氷のような冷たい肌を持ち、
曰く......何よりも、人間という生き物を憎悪しているという。
ーーーーーーーー
「暑い......」
額からうっとおしく流れてくる玉のような汗に舌打ちし、憎らしげに太陽を睨めつける。
アイツは応えない。ただ嘲笑うかのようにかんかんと俺の皮膚を焦がす。
もう何ヵ月も雨が降っていない。
いくら土を耕しても、質のいい種を手にいれても、水が無ければ芽吹くはずもなく。
近くに小さな井戸と狭い林があるだけのこんな山奥の村で土いじりなどしても無駄だということは、自分がよく分かっていた。
「クソッ......この土ももうだめか」
隣の町から仕入れてきたものは、これで尽きた。
もう根菜どころか、雑草だって育てられない。
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