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まあ、野晒しになるよりはマシだろう。
クワを壁に立て掛けて、埃の被った床に寝転がる。
最近掃除もしていない。家財はクワ以外全部売り払って全て質のいい土や根菜等の種、少ない食料と水に変わっていった。
それも全部、この燃えるような暑さが根こそぎ奪っていってしまったが。
クワさえあれば土を耕して自給自足できると思っていた自分の愚かさを呪う。
けれども、そんな行き当たりばったりの生活で今まで15年も生きてこられたのだから、俺にとっては悪くない選択だったのかもしれない。
さて、何か売るものはあるか。
周りを見渡しても壁と屋根、あとはクワに自分......そうか自分か。
栄養は少ないが健康な体だと思うし、いざとなったら男娼という手もある。
こんな身なりの俺でも買ってくれる物好きは少しはいるだろう。気に入ってくれたらもしかしたらチップとかもーー。
ーーヒヤリ。
「ん?」
体を起こし、背中についた埃もそのままに視線を動かす。
「なんだ、今のは?」
冷たい? 何故こんな照りつけるような暑さの日に冷気が。
水などあるはずがないし、汗で体が冷えたかと思ったが、それとはなんか違うような気がする。
立ち上がり、立て掛けてあったクワを手に家を出る。
「こっちか......」
外に出ると微かだが冷気が強くなってる感じがする。
俺はそれを頼りに、ゆっくりと自宅の裏手にある林へと進んでいった。
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