515人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
べつに、隠さなくてもいいと言われた。でもやっぱり、なんとなく言いだしづらい。
「お前、明日から二日間休み取っただろ。旅行か?」
「あっ、いや!」
ゼロスの突っ込みが今日は鋭い。隠せずにあたふたすると、右からレイバンが、左からハリーがガッシと肩を組んだ。
「水くさいじゃないの~、ランバートさん」
「そうだよぉ。俺たちに隠し事なんてしたら、いーけないんだー」
「観念しちゃいなよ、ランバート」
ニヤニヤしている三人にもう一杯一杯になって困っていると、不意に背後から影が差した。
「お前、ここにいたのか」
「ファウスト様!」
途端に全員の表情が締まる。ただ一人、ランバートを除いては。
「悪い、邪魔をする」
「構いませんが、珍しいですね」
「少しな。ランバート、明日迎えに行く。寝とけよ」
「…はい」
それだけを伝え、柔らかく頭を撫でられる。それだけで多少心臓が煩い。柔らかな微笑みを見上げ、出ていった人の背を追ってしまう。視線だけが、そうしている。
「…ねぇ、あれって…」
「…ランバート?」
顔が熱いのをごまかせない。早く慣れなければと思うのだが、どうにもできない。
多分仕事モードなら平気だ。何より誓約書を書かせた。大事な事は最初のうちに、そう思って。
「大物釣ったな、ランバート」
最初のコメントを投稿しよう!