魂の降る夜

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この街には、年に一度だけ雪が降る たった一度だけ、必ず同じ日の夜に そしてその日はお祭りとなる 御霊祭(みたまさい) この街では、雪は死んだ人の魂が街に帰ってくるのだと信じられている 年に一度雪となって、帰ってきて降り積もり、春になれば溶けて水となり、川に流れて新しい命を育む礎となる そう、信じられている 街は露店や音楽隊の陽気な歌で賑わい、人々は踊ったり談笑したり思い思いの時間を過ごすのだ 冬の憂いをなぎ払うように、どの家も競う様に一年に一度の豪華な飾りを施し、夜になれば暖かな光を灯した ただ一軒、我が家を除いて 私はお祭りの日は一日中家に籠り、日が暮れた頃、一人街の外れの森へ行く それは、5年前から習慣となったことだ
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