魂の降る夜

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私の街を統治する国は、五年前まで隣国と長い長い戦争をしていた 私のお父さんは、鍛冶師として、五年もの長い間、ずっと武器を作り続けた 私のお兄ちゃんは六年前に徴兵されて戦争に行った 五年前にようやく休戦状態となって、お父さんは帰ってきてくれたけれど、お兄ちゃんはついに帰ってこなかった それからだ、お母さんはすっかりふさぎ込んでしまって、食べ物も喉を通らず、やせ細って病床に臥せっている ずっと私を支えてくれたおばあちゃんも、もう私のことすらわからなくなってしまった お父さんは私たちを養うために必死で働いてくれて 私は学校にも行けずに家のことやお母さんとおばあちゃんの世話に追われていた 一目でいい お兄ちゃんに会いたいと思った お兄ちゃんとの思い出は、楽しい物ばかりで、私の心を温かくしてくれる 辛い毎日を支えてくれるのは、お兄ちゃんとの思い出だった 「お兄ちゃんに会いたいの?」 何も言っていないはずなのに、スネグーラチカは私の顔を覗き込みながら尋ねてくる 水晶のような青い瞳が、私を見ていた 「うん」 気が付くと、そう首を縦に振っていた スネグーラチカはすうっと息を吸い込むと、歌をつむぎ始めた 初めて聞くそのメロディに私の体がふわっと軽くなったような感覚にとらわれる 「一回だけ、スニェークを僕たちの世界に連れて行ってあげるよ」 気が付くと、私は体から抜け出して、スネグーラチカに手を引かれるまま、森の中に吸い込まれていった
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