死がふたりを分かつまで

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 ふらついてテーブルを滅茶苦茶にするわ、もどして場を阿鼻叫喚にするわ、さらには部長にはその場で飲み会出禁を言い渡された。  意識を失う前にちらりと見えた、斉藤さんの俺に対する怯えた瞳が忘れられない。  谷中の部屋は少し肌寒い位だった。  その代わり、腰から下はぽかぽかしていた。  「こたつ、暑くない?」  細かく気を配ってくれる谷中に、うん、と返す。  耳のそばでドラム缶を打ちならされているような頭痛には、ひんやりした室温が心地よかったし、飲み食いしたものを全部出しきってひりついている内臓を暖めてくれるこたつの遠赤外線のありがたみをこれ程感じたことはないと思った。  一人暮らし用のこたつの真ん中を占拠しているせいで、家主の谷中が遠慮してこたつの足の外でこたつ布団にくるまっているらしいのが、申し訳ない。  たいして仲良くもなかった上に、こんなサイアクな失態をした野郎を家に連れてきてくれる谷中が神様仏様に見えた。
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