死がふたりを分かつまで

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 谷中は何しろ目立つので、直接話したことはあまりなかったのだが、噂で家族構成などを聞いて知っている。  姉が四人いて、一人はモデルの谷中ゆり。他のお姉さんも医者とか弁護士とからしい。  父親はスゴい特許とかをいっぱい持ってる研究者で、母親は有名な日本画家。  谷中本人も絵が上手くて、色んな賞を取ったことがあるらしい。  こんなスーパーマンだから、谷中はかなりモテる。  今日の忘年会でも、女子の100パーセントが谷中と話したくて来ていた感じだ。  いや、女子だけでなく男子も。  とにかく頭も良いし、センスもあるし、顔もスタイルも完璧で、それを鼻にかけることもなく、優しく人当たりも良い。  あの斉藤さんでさえ、谷中と話すときの瞳はハートになっていた。  あー……。  それに引き換え俺は、と気持ちが沈む。  ごろんと仰向けに転がった。  「あん」  すごい声が聞こえて、俺は謝る前に吹き出してしまった。  「ご、ごめ……っ、っぶっ……くっ……」  「も、もお、笑わないでよ……!ガッチーがヘンナトコいきなり突っつくからじゃん!」  狭いこたつの中で身体を転がした瞬間、爪先が谷中のどっか柔らかいところを突っついてしまったらしい。  谷中はむくれた顔を耳まで真っ赤にして、腕で顔を隠していた。  顔が整っているので、女の子のような仕草をすると、なんだか本当に可愛らしかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加