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谷中は何しろ目立つので、直接話したことはあまりなかったのだが、噂で家族構成などを聞いて知っている。
姉が四人いて、一人はモデルの谷中ゆり。他のお姉さんも医者とか弁護士とからしい。
父親はスゴい特許とかをいっぱい持ってる研究者で、母親は有名な日本画家。
谷中本人も絵が上手くて、色んな賞を取ったことがあるらしい。
こんなスーパーマンだから、谷中はかなりモテる。
今日の忘年会でも、女子の100パーセントが谷中と話したくて来ていた感じだ。
いや、女子だけでなく男子も。
とにかく頭も良いし、センスもあるし、顔もスタイルも完璧で、それを鼻にかけることもなく、優しく人当たりも良い。
あの斉藤さんでさえ、谷中と話すときの瞳はハートになっていた。
あー……。
それに引き換え俺は、と気持ちが沈む。
ごろんと仰向けに転がった。
「あん」
すごい声が聞こえて、俺は謝る前に吹き出してしまった。
「ご、ごめ……っ、っぶっ……くっ……」
「も、もお、笑わないでよ……!ガッチーがヘンナトコいきなり突っつくからじゃん!」
狭いこたつの中で身体を転がした瞬間、爪先が谷中のどっか柔らかいところを突っついてしまったらしい。
谷中はむくれた顔を耳まで真っ赤にして、腕で顔を隠していた。
顔が整っているので、女の子のような仕草をすると、なんだか本当に可愛らしかった。
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