死がふたりを分かつまで

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 本当にイイ奴だ。  こんな完璧に完全無欠のイケメンに好かれる相手は、幸せだろうなあ。  こいつに好きな相手を取られて文句が言える男はいないな、と思った。  完敗だ。  「真面目といえば、ガッチーもね。今日の飲み会、大チャンスだったのに。相手の恋の成就を願っちゃって、途中からやけ酒して」  「……え。何、俺、バレバレ……?」  「バレバレ……だね。斉藤さんでしょ」  うわああああ……っ  俺は、恋敵にコテンパンに打ちのめされて頭を抱えてこたつ布団の中に潜った。  恥ずかしすぎて、悲しすぎて、それからまだちょっと気持ち悪くて少し泣いた。  「谷中さ、完璧すぎるんだよ。ちょっとくらい俺にスペック分けて欲しいわ」  悔しくて俺はこたつから少しだけ顔を出して谷中に毒づく。  もう僻み丸出しで、負け犬の遠吠え甚だしい。  「スペック、かあ。ガッチー、僕は恋にスペックなんて関係ないと思うよ。相手との、波長っていうか、相性っていうか。そういうのが合うかどうかが大事だと思うなあ」  スーパー完璧超人の御言葉を、俺は黙ってありがたく聞くしかなかった。  「たとえば、こういう、一人用のこたつに、二人で入っていて、心地よく居られるかとか」  「あー。なるほど……」  「本音で話をして、なるほどって相手の気持ちに寄り添えるかとか」  「うんうん」  「……偶然、変なところに身体の一部があたっちゃっても嫌じゃないか……とか」  「あー、それあるらしいね。女子は特に」  「…………」  それから? と次の例を待つ俺を見て、谷中は黙りこんでしまった。
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