あの夏

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40秒で仕度することはできなかったけど、20分もかからなかった。ちゃんとお風呂に入って寝る準備をしておいたことがよかったのかもしれない。とりあえず明日の朝ごはん用に買っておいたパンとメイク道具、コンタクト、着る服も迷わない。とりあえず目に写るものをバッグにぶち込んで待ち合わせのコンビニに向かった。 待ち合わせのコンビニに着くとまだ時間があったので2人分のお茶を買った。合流したあんちゃんは、 「お父さん、新幹線で来いって言っとったけど……」 わたしと同じことを言っていた。うん、お父さんは本気でそう言ってたと思うよ。 あんちゃんが運転するその車は火が吹くような音を鳴らして、夜の道を爆走した。だけど結局、わたしとあんちゃん、それからちぃ兄ちゃんも。一番近くにいたちぃ兄ちゃんですら間に合わなかった。死亡診断書に記された時間は、わたしとあんちゃんがちょうどコンビニで合流した時間だった。 高速道路の途中で母の死を知らされたわたしたちは、途端に目的地を失った。病院か、それとも実家か。そもそも、何処を目指して走っていたのかもわからない。 3時、葬儀屋さんが病院に来て母を連れていく、もし間に合うなら病院に来るようにとちぃ兄ちゃんから連絡があった。母はこのまま家には帰らず、葬儀屋で24時間を過ごした後、直接火葬場へ向かうことになっていた。 ○○家にはかえりたくない……ーー それは母が望んだことだった。 ちぃ兄ちゃんが言った時間はナビが知らせる到着時間と同じ時間だった。間に合うだろうか。
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