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おそらく、わたしは父を傷つける言葉でどれだけでもののしることができた。それは自分自身に向けた言葉でもあった。だけど、わたしは父を傷つけたいわけじゃない。感情のままに父を責めれば、きっと一生後悔する。
涙が溢れてきてこらえきれず、わたしはこの時、初めて泣いた。母が亡くなって誰も泣かなかった。だから、わたしも泣くまいと思っていた。だけどもう、止められなかった。
「お父さんの兄貴はお母さんにとっては他人でしょ。でも、お母さんのお兄ちゃんや妹は他人じゃないじゃん。血の繋がった家族じゃん。他人を呼んで家族を呼ばない方がどうかと思うよ。理由ならそれだけで十分じゃん」
わたしはおかしなことを言っているだろうか。それでも父は受け入れてくれようとはしない。
「……けど、今日の明日だぞ。急に言っても向こうだって困るだけだぞ。来れやせんって」
「だとしても、それはわたしたちが決めることじゃないと思う。来るか来ないかは向こうが決めることじゃないの?全部終わってから言われても、おじさんもおばさんもどうしたらいいかわからんじゃん。知らせてほしかったって言われても、そっちの方がどうしようもないんだよ?」
譲れなかった。目に力を込めれば込めるほど、熱い粒がこぼれ落ちる。だけど、父に頷いてもらうまでは一歩も退かない。これはわたしだけじゃない、母が望んだことなのだから。
それなのに父はどんなに歯切れが悪くとも言い訳ばかり並べながら否定した。そんな態度にイライラしつつ、それでも言い方が強くならないよう、必死に堪えながらわたしも言葉を返す。身内だからか、どうしても口調に遠慮がなくなってしまいがちになる。
そんなやり取りをしばらく、黙って聞いていたあんちゃんがようやく口を開いた。
「とりあえず、Tおじさんにだけは連絡した方がいいんじゃない?で、Tおじさんがどこまで連絡するかはわからんけど、そこから先は任せたら?」
あんちゃんはずっと日記を読んでいた。途中、読めない文字があると、「これってなんて読むと思う?」とききながら。それでもあんちゃんがそう言ってくれたことで、父もようやく受け入れる気持ちになったようで、おじさんに連絡をしてくれた。
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