あの夏

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母の棺をみおくると、仕事を途中で抜け出してきたので戻らないといけないと、おばさんやおじさんが帰ると言った。忙しい中、それでも来てくれた人たちに改めて感謝を伝えると、従姉妹の一人が何かあったら相談にのるからと連絡先を教えてくれた。その人も、つい先月父親を亡くしたばかりだった。 火葬がすむまでの間、あんちゃんとちぃ兄ちゃんが母のお骨をどうするかを話し合っていた。母は持って帰るなと言ったけれど、わたしたち子どもだけで話し合って、どこか永代供養してもらえる場所を探そうという話になっていた。 最初、母方のお墓に入れてもらうのはどうだろうと相談していた。すると、父方のお寺にきちんと断りを入れて、お通夜もお葬式もやって、ちゃんと法事もやることが条件だと言われた。そしてそのために必要な費用を提示してもらった。そこで改めて現実を突きつけられた。ごめん、無理だわ。 その前にお骨だ。今日、火葬が済んだら母のお骨を誰が持って帰るか。ちぃ兄ちゃんが持って帰ると言ってくれたけど、わたしは自分が預かってもいいと思っていた。 けれど、そこは里帰りという意味も込めて、みんなを集めてくれたTおじさんが持っていってくれることになった。今日、来れなかった人もいるだろうし、そういう人にはうちよりも足を運びやすいだろうと。だけど、いつまでも預かってもらうわけにはいかない。 数日後、ちぃ兄ちゃんが見つけてくれた永代供養のお寺は、母が生まれた土地だった。花の綺麗なお寺で有名らしい。 そこに母はいま眠っている。
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