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第一話「心を開いてくれたかもしれない」
近頃○○系女子・男子と、動物に人を例えるのが巷で流行っているようだ。
それにあやかっていいのなら、俺 練本祐の幼なじみはまさしく猫と例えるのがピッタリだと思う。
四月の八日目の朝。
春休みが終わり、はれて高二。
そんな大事な? 朝に、隣にお住まいの幼なじみ 須藤円芭さんが俺とほぼ同時に家から出てきた。
目が合う。
「お、おはーー」
だが、それは一瞬。
挨拶を聞かず自転車に跨がり、俺など見えていませんとばかりにサーと去っていった。
な、猫っぽいだろ?
こっちからのアプローチには、大抵こうである。
……俺も行くか。あー、ダルい。
今日は入学式のため早い下校。
どうせなら休みにしてほしかった。
憂鬱な気分で、もう春だというのにまだ冷たい風を切りながら自転車のペダルを漕ぐ。
「はぁ……」
ため息をつき、前方の信号が赤になったので自転車を止める。
キィッ。
うん?
俺の自転車とは別のブレーキ音が横から聞こえた。
「お、おはよう……はぁ……はぁ……」
「うっす」
ブレーキ音のした方を振り向くと、親友の住吉 諒が横にいた。
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