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 周りに流されないで染めたりパーマかけたりしない自然な黒髪が好き。わたしの話を聞いてくれる可愛い耳が好き。優しく笑う口が好き。ちゃんとわたしを見てくれる目が好き。  咲也が、大好き。  でも、バレンタインデーに告白なんて馬鹿みたいに踊らされたくない。そんなイベントに振り回されるなんて、嫌だ。  余計にバレンタインデーが嫌いになりそうだから。  駅のホーム。電車を待っていたわたしたちは無言。  それはわたしの不機嫌のせいなんだけど、もやもやしたまま別れるのは嫌だってちょっと思う。 「咲也、さ。バレンタインデー……好き?」  だからって、なんてことを聞いてしまったんだろう。  混乱しているのかもしれない。結局、わたしもイベントに踊らされているみたい。  本当に情けない。
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