2人が本棚に入れています
本棚に追加
▽▲▽
夜。はらはらと雪が舞う様子を、由良はベランダで眺めていた。受験勉強なんてそっちのけ。いけないことは、分かってる。けど、今夜だけ……。
漆黒の空から零れ落ちる、純白の結晶。由良はその黒白のコントラストが好きだった。理由はない。何となく好き。それだけ。
ふと、一際大きな雪が舞い降りてきていることに気づいた。思わず口角が上がる。今日も、来た。
「六花」
由良が呼びかけると、雪がすぅっと人の姿になった。長身の、全身が真っ白な男性。
男性はにっこりと笑った。綺麗な微笑みに、胸がきゅん、と。
「久しぶり、由良」
甘くて心地の良い声に、由良はそっと身を委ねた。
「うん、久しぶり、六花」
そう言うと、冷たい感触に包まれて……。由良は六花に抱きしめられていた。冷たいけれど、どこか暖かい。だって、六花だもの。
▽▲▽
六花は雪の精。そんな彼と由良が出会ったのは、由良が小学生の頃。
最初のコメントを投稿しよう!