雪の夜の招待客

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 誰も住んでいないとは思っていても、慎重に物音を立てないように中に忍び込んだ。  俺はこの仕事で一度だって失敗したことはなかった。あのときまでは……  腕がなまっちまって、もう年なのか。  それ以来、初めて入った塀の中でこの世界から足を洗うと心に決めた。  あれから5年  塀の外にでることだけを考えて、逃げるなら雪の降る夜と決めていた。  雪が姿をくらましてくれるだろうから。  そして、とうとうこの日が来た。10年ぶりの大雪の今日。絶好のチャンス。  俺は計画通り実行した。  自由を求めて――  もう二度と捕まるものか。  俺は生まれ変わるんだ。  窓を超えて入った部屋はどうやらリビングらしい。  外の灯りが立派なソファーや調度品をうっすらと浮かび上がらせた。     しめた――  ここはよほどの金持ちの別荘のようだ。  しばらくここで休んでから金目のものを探そう。  疲れた身体を投げ出すようにドサッとソファに腰掛けた。    と、そのとき突然部屋の灯りが点いた。  一瞬、何が起こったのかわからなかった。  先ほどまで人の気配などしなかった家に煌々と灯りが灯された。いつの間にか暖炉にも暖かな火が燃えている。 「な!」     
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