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帰り道。
姉はずっと泣いていた。
そんな姉に、俺はいろいろなことを話した。
昔は、俺が姉に負ぶってもらって家に帰ったこと。
姉は学校で、なかなか人気があったこと。
姉が弾くバイオリンが、好きだったこと。
今でも姉が、大好きなこと。
「つまり、瞬はシスコンだったわけね。」
「うるせぇ、突き放したら突き放したで拗ねる癖に。」
少しだけ落ち着いた姉を背負いながら、自宅近くの駅の階段を下りる。
今回は、たまたま通りかかった女子高生が、ふたりがかりで車椅子を運んでくれた。
「なぁ、俺さ……姉さんと病院行くようになってから、つまらねぇ喧嘩が減った。」
「なに自慢気に言ってるの?喧嘩しないなんて当然のこと。」
「そうじゃねぇよ。姉ちゃんと一緒に居ると……優しくなれる。」
介助することを知り、実際に俺自身が体験して、人にやさしくあることがどれだけ大変なことかを知った。
舌打ちする人もいる。
迷惑そうな顔をする人だっている。
それでも。
応援してくれたり、車椅子を押してくれる、そんなやさしい人は、確かに存在するのだ。
「俺、他人なんてどうでもいいと思ってた。でもさ、俺達だけじゃ、結局何も出来ねぇんだよな。」
小さいころから言われる、『人にやさしく』
その言葉の意味を、本当の意味で理解することが出来た、そんな気がした。
「だからさ、姉ちゃん……」
そんな気持ちを教えてくれた姉に、感謝を。そして、優しさを。
「……もう、どっか行くんて、言うな。」
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