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『バリアフリーの設備が整ってきた』
これは、健常者の勝手な見解。
実際、介助をするようになって俺は嫌というほど痛感した。
歩道から交差点へのわずかな溝で止まる車椅子。
持ち上げようと足が止まる、その脇をすり抜けていく人達。
スロープとは名ばかりの、雑な造りの坂。
身体にのしかかる、姉の体重と車椅子の重み。
乗っている姉は、身体が大きく傾き、落ちるかもしれないという恐怖と闘う。
そんな俺たちの横を、階段から見下ろす、人達。
見ているだけならまだいい。
中には、一瞬通路を塞いだだけで舌打ちをする人さえいるのだ。
迷惑そうに、身体を大げさに避けて通り抜ける人だっているのだ。
俺は、そんな人たちに苛立ちながらも……
(俺も、こんなこと、してたかもしれないな……)
『介護する側』にまわって初めてわかることもある。
俺は、これまでの自分の行動を省みる機会を得た。
いつもなら10分かからない、近所の病院への道。
姉の車椅子を押しながら、受付を済ませるまで、初日で40分かかった。
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