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『障がい者に厳しい現実』
それは、家を出て30分もしないうちに俺たちの前にやってきた。
「…………あ」
大きな、大きな階段の前で足を止める。
海に向かうには、電車に乗る。
自宅から海へと向かう方向、最寄りの駅の『2番』ホーム。
そう、つまり線路の向かい側のホーム。
俺ひとりなら、なんてことない2番ホーム。
最寄りの駅は、栄えた街の駅ほどバリアフリー設備は整っていなかった。
「……あ、そうか。」
姉が、ようやく俺の置かれた状況に気づく。
「ごめん……やっぱりやめよ。私のわがままの所為で、無駄足させちゃってごめんね……」
姉が、最近よく見せるようになった苦笑いを俺に見せる。
この先、姉はどれだけ我慢し、諦めていくのだろう。
何度、俺の前にこの苦笑いを見せるのだろう……
「ふざ、けんなっ!!」
許せなかった。
出来そうなことすら諦めなければならない、姉の置かれた状況が、ただ許せなかった。
俺は姉を背負い、車椅子をたたんで持ち、階段に向かう。
「ちょ……大変だよ!無理だよ!帰ろ?ね?」
そんな俺を心配して、姉が大きな声を上げる。
「……まだ、じゅうぶん時間はある。姉ちゃん、海……行くぞ!」
姉には分かって欲しかった。
諦めなければ、遠回りでも叶う願いがある、と。
障害があるからと言って、何でも諦める必要はないということを。
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