冬の陽だまり

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 ここはとても暖かくてほんわかして、一家の絆を深める場所なのだけれども、何事にも光と闇の部分、長所と短所をあわせ持つ。もちろん、これもそうだ。  あまりに心地良くて眠気を催したり。そのまま寝てしまえば風邪を引く。あまりに心地良すぎて、何もする気になれなかったり。  だからお母さんは時々こう言う。 「魔の誘惑よ」  と。  だから僕は、うとうとしそうになる長老夫婦を起こしたり、宿題をサボってそこでテレビばかり見そうになる弟や、ついつい億劫になってその場所から動かないでゴミをゴミ箱に投げ捨てる兄や父。彼らをいさめるという重要な使命を司っている。  そこは冬の温もり。一家の絆を深める場所。そう、『こたつ』だ。  僕はここを、『冬の陽だまり』と呼んでいる。僕はこの、『冬の陽だまり』の守り神なんだ。  松本家に遊びに来る人達は、僕の事を 「あらぁ、可愛いチワワちゃんね」  なんて言うけれど、チワワって何だ?  「可愛いワンちゃん。お名前は?」  とかさ。ワンちゃん? 犬、とか言い出す奴もいるが、犬とは何ぞや?  この際だから僕は宣言する。僕は松本優太。松本家の『冬の陽だまり』の「守り神」さ。  さぁ、今日も1日が始まる。母が『冬の陽だまり』に明かりを灯した。さぁ、「守り神」である僕の1日が始まる。 「おはよう、お母さん」 「おはよう、優太。今日も早起きね」  母はそう言って、僕の頭を撫でた。
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