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ぶつかった瞬間ちらりとだけ視線が合った―顔は印象に残っている。浅黒い肌に、亜麻色のぼさぼさの短髪。瞳は猫のような金色をしていた。それなりに磨けば光りそうな容姿だったが……。
「うーん……でも参考になるのがそれだけじゃなあ。それにしても畜生、もとはといえばあのガキが……。見つけたら、ただじゃおかねえ」
ぶつぶつ云いながらも、ヴァニオンは繁華街へ出て街の人間にスリ被害が多い場所や、乞食の集まる場所はどこか聞いて歩き、真剣に自分の金を取り返そうと頑張った。
(自分の金といっても、資金の元になった貴金属の半分以上は冥王からヴァニオンが預かったものである。…ナシェルには無論、内緒だ。)
旅客や水夫らで賑わう通りを往復したり、脇道を覗いたりして子供の姿を探しているうちに、もう昼過ぎになっていた。
先ほど気づいたのだが、幸運にもズボンには数枚の銀貨が入っていた。べつにいま飯代をケチらずともしばらく飢え死にせず暮らせるぐらいの値打ちだ。
が、ヴァニオンは最悪これを王子に差しださねばならないだろうと考えていたので、昼飯もあきらめて目的の少年を探し続けた。
そうした彼の執念が結実する瞬間は、唐突に訪れた。
「……ん?」
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