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当日、ふたりはビル前で待ち合わせをした。時間の10分前に陽子が着くと、凪音は既に待っていた。かなり前からいたのか、顔は寒さで赤くなっている。
「待たせたみたいね。いつ来たの?」
「小一時間くらい前かな。はやく来た方がはやく陽子さんに会えるでしょ?」
そう言ってキラキラスマイルを見せてくる長身の爽やかイケメン、凪音。
背は180程の高身長、有名な大学出身、さらさらふわふわな黒髪、大きな目に高い鼻、薄い唇の整った顔立ち、そして声は癒し系。
性格はとても優しく少しお茶目。細かい気配りも出来る。
本当に乙女ゲームにしかいそうにない男性だがひとつだけ難点があり、陽子はそれに悩まされ続けている。
「寒いし中に入ろっか」
凪音はそう言って手を差し出す。
「そうね、行きましょっか」
陽子はその手を握ってビルの中に入る。
「陽子さんが手を握ってくれるなんて嬉しいな」
凪音は照れ笑いをしながら言う。
「そう?」
「いつも恥ずかしがって拒否してるじゃん」
(恥ずかしがってないけどね。嫌なだけだし)
陽子は心の中で毒づいた。
ふたりはエレベーターに乗った。幸い他に人がいて、ふたりの会話はここで止まった。
7階のレストランに着き、凪音はスマートに陽子をエスコートする。運のいい事に窓際の席だ。
席に座って注文をすると、陽子はチラリと外を見た。雪はまだ降ってない。
「窓際だと少し寒いね。ごめんね、夜景綺麗かなと思って窓際にしちゃって……」
凪音は申し訳なさそうに言う。
「私も窓際が良かったからいいよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
それからふたりは食事と雑談を楽しんだ。
デザートを食べている最中、雪が降り始めた。
「見て、雪」
「綺麗だね」
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