雪の夜のデート

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「ねぇ、食べ終わったら一緒に雪見に行かない?」 陽子は目を輝かせながら言った。 「ここからじゃダメ?外じゃ風邪ひいちゃうだろうしここからでも綺麗に見えるよ?」 (うっさいバーカ!私が見たいって言ってるんだからのりなさいよ!) 「良さそうなところあるの、このビルで。ダメ?」 「まぁ陽子さんがそこまで言うなら……。でも風邪をひいたら大変だから少しだよ?」 「うん、ありがと」 それからふたりは食事を終わらせ、会計。 凪音はジャケットの右ポケットから財布を取り出して支払ってくれた。 「じゃ、行こっか」 陽子は凪音の右手を握って非常階段へ行った。隙を見て財布を盗みながら……。 「やっぱり外は寒いね……。陽子さん、大丈夫?」 「うん、平気。それより見て!」 陽子は雪景色を指差す。 「夜景と雪を同時に見れるなんて贅沢だね」 凪音は目を細めて雪を眺める。 「ね、雪の結晶も降ってるのかな?」 「かもね」 「雪の結晶取って」 「え?」 「ね、いいでしょ?」 「仕方ないなぁ」 凪音は手すりから身を乗り出し、手を伸ばした。 「あ、もうちょっと先!」 「どこ?……えいっ」 陽子は素早くしゃがんで凪音がジャンプしたと同時に、足を持ち上げて下に落とした。 「うわぁ!?」 凪音はそのまま暗闇に消えた。 陽子は手すりやドアノブの指紋を拭き取ると軽い足どりでビルを出て、凪音の財布で買い物に出かけた。 高いシャンパンやチーズ。紅茶に高級チョコレートなどを買って家に帰った。 家に帰ると陽子は暖房をつけ、グラスを取るとそこにシャンパンを注いだ。 チョコレートと紅茶を仕舞って座ると、シャンパンを高く掲げた。 「大掃除出来た聖夜に乾杯!」 陽子はシャンパンを飲み干し、チーズをかじった。
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