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プツンッ
陽子の中で何かが切れた。
「酷いのはどう考えてもあんたでしょ!てかどうやって私の家知ったのよこのストーカー男!」
陽子は怒鳴るとぬるくなった紅茶を飲み干した。少しだけ落ち着く。
「本気と書いてマジと読む世の中だよ?その逆もあっていいと思わない?」
「逆?」
「ストーカーと書いて彼氏」
そういう凪音はどこか得意げだ。
「ストーカーと書いて彼氏ねぇ……新しいわねぇ……」
陽子はコートのポケットをガサゴソ漁る。
「でしょ?いいと思うんだけどな」
凪音はニコニコしながら言う。
「ふざけんのも大概にしろクソストーカー!」
陽子はコートのポケットから取り出したバタフライナイフで凪音に襲いかかる。急な事だったため、凪音には避ける暇もない。
「うっ!」
凪音は陽子の手ごとナイフの柄を握る。陽子がその手を振りほどくと凪音はその場に倒れた。
「終わっ、た……?」
陽子は凪音の死体をマジマジと見る。そして数分後、彼は死に、呪縛が解かれた事を理解した。
「ふ、ふふ……あはっ、あっはははははっ!!!終わった!これで終わったのよ!」
陽子は嬉しさのあまり、その場でクルクル回って踊りだす。
「踊っている君は綺麗だね」
その声に陽子の表情も動きも固まる。
恐る恐る振り向くとバタフライナイフを片手に握った凪音が座り直していた。
「なんで……」
陽子はその場に崩れる。
「なんでって……大好きな陽子さんをひとりに出来るわけないでしょ?はぁ、今日は厚着してきて良かった」
「厚着って……そんなのでナイフが刺さらないわけないでしょ!?」
「そう?」
凪音は服をめくった。そこにあるのは綺麗な素肌……ではなく防弾チョッキ。
「あんた……そんなのどこで……」
陽子は顔を引きつらせながら質問した。
「それは秘密。それよりお財布返してくれないかな?中身はいいからさ」
そう言う凪音は先程殺されかけた事なんて無かったかのように、穏やかな笑みを浮かべた。
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