そういうこと言っちゃう女

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「撃てますか? その銃」 「ナメんなよ」 「では、よろしくお願いします」 抜ける。 樹林の中から狭い入り口を通り、スフォルツェスコ城の城郭へ。 探す、敵車。 いない。 敵車は、いない。 それはここがまだ、れっきとした車道ではないからだろうか。 「いない……か?」 「はい、まだ追っ手はいないようで…」   ゴォォォォオオオオオオオオッッッ!!!!!!!! いない、敵車は。 敵“車”は。 だがその空気を揺るがす轟音は、確かにムルシエラゴの車内まで届いた。 「クソ女!! 上だ!!!!」 「上……!?」 そいつはスフォルツェスコ城の上空25メートルにいる。 地面の粉塵を巻き上げながら、未確認飛行物体のように浮かぶ、流線型の鉄の塊。 煌めく。 両翼に取り付けられた、機関銃とミサイル発射口。 「……逃げ切れそうか?」 「さぁ。ただ、ここで死ぬのはゴメンですね」 今から相手にするのは、車ですらない。 イタリア陸軍の攻撃回転翼機。 対峙。 ムルシエラゴと、A129 マングスタ。 猛牛と、それを見下ろす巨大なマングース。 動物界における強弱関係は完全に裏返った。 だがムルシエラゴのハンドルを握るヒューガはそれでもなお、狩りに向かうような炎を紅蓮の瞳に宿している。 「では、帰りましょうか。レオさん」 「そうだな。愛しの我が家に」 踏み込むアクセルと、一思いに繋ぐクラッチ。 城郭を抜けるムルシエラゴと、上空かその背を追うマングスタ。 レオとヒューガを乗せたムルシエラゴは、南東方面へ向かってテールを滑らせ始めた───。 アグスタ・A129 マングスタ (金額非公開)image=509417432.jpg
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