自分という存在

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「解離性同一性障害?」 そんなもの生きてきた上で初めて聞く言葉だった。 解離したものが何故、同一なのか。理解が出来ない。 そもそも障害と言う言葉が付いていると言う事は、何かしら俺に異常があるという事。それだけは分かる。 精一杯の知識の中で理解をしようとする俺をよそに唐橋は淡々と話を続ける。 「…まだ、そうと決まったわけではないが、君のその変わり様を見る限りはほぼ間違い無いと思う」 「それは一体ーーー」 「最後まで話を聞くんだ」 珍しく強い物言いで俺の言葉を制す唐橋は、その言葉を聞いて黙る俺を見て、言葉を続ける。 「さっき君は何も分からないと言った。だから僕は君に僕の持ち得る君に関する事を教えた。だけど…」 そこまで言って唐橋は口を濁らす。 「単刀直入に言うんだろ?だったら教えてくれ」 「…ああ、そうだったね。すまない」 俺の言葉に唐橋は謝罪の言葉を述べる。 謝るくらいならさっさと話せば良い。 どうしてこうも人間という生き物は、そう言った事を口に出さないのだろうか。 ハッキリと言ってもらえた方が諦めというものはつくのに。 そう思ったが、それは思うだけに留めて、言わないでやる。 きっとコイツもコイツなりに辛い事なんだろう。 俺は再び口を開き始めた唐橋に、今度は真剣に向き合う。 「失礼した。では…」 乾いた口を湿らすように一度唾を飲み込み、真剣な表情で言葉を紡ぐ。
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