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「君は『彼』とは違い、僕の言葉を理解し、そして自分の意思でそれは何なのかと尋ねた。つまりそれは、君は君という独立した存在であるという事を証明したも同じ事なんだ」
「そんなの当たり前だろ。俺は俺なんだから。…長ったらしい説明は抜きで本当の事を言えよ」
俺はその回りくどい言い回しに苛立ちを隠せなかった。
言うならハッキリとお前はこうだ、と言ってもらいたい。
何ならお前は後この程度しか生きられないと余命宣告でも良い。
それが正直なところだった。
「…本当に君は理解が早い。正直、ここまで話の早い患者さんは初めてだよ。でも、すまないね。職業柄、こう言う説明はしなければならない。だから、もう少しだけ付き合ってはもらえないだろうか?」
本来ならば、こんな説明はしたくはない。そんな思いが伝わるような言い回しだった。
俺は再び取ってかかろうとする。しかし、唐橋の表情は真剣そのもので、俺は素直にその言葉に頷く事しか出来なかった。
「ありがとう。僕の気持ちを汲んでくれて」
「いや、俺が一人でに突っ走っただけだ。謝らなくて良い。と言うより謝るな。気分が悪くなる」
そう俺が返すと、唐橋は少し困った表情を見せ『職業柄それは約束出来ないかな』と笑ってみせる。それはもう目一杯に。
その姿を見て、俺は呆れて物を言う気すら失せてしまう。
なんなんだコイツは。
自分が辛いと思ってる事を何故平気な顔して笑って言える。
そんなにも嫌ならば、いっその事全てを投げ出してしまえばいい。そうすれば少しは楽になると言うのに。
それでもコイツがこの仕事を続けているのは、それにも代えられない、何か別な大切な事があるからなのだろう。
俺には到底理解出来ない。
ただ、そんな何でもないやり取りだったが、不思議と悪い気はしなかった。
「…一つ頼みがある」
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