自分という存在

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「おはよう、昴君。調子はどうだい?」 ガラッと扉の開く音と共に唐橋さんは開口一番にそう聞いてきた。 「あ、おはようございます。今朝は気持ち良く起きられました。まあ、相変わらずこのベッドの寝心地は良いとは言えないですけど」 軽く皮肉を交えて返す僕を見て、唐橋さんは笑いながら僕が横になっているベッドへと歩み寄る。 「ハハハ…それはすまないね。まあ、でも、あと数日の辛抱だから許してくれ」 勿論、唐橋さんもその事は分かっている。でなければ、初めて会った時みたいにきっと取り乱していると思うから。 そんな僕の姿を見て、唐橋さんは嬉しそうに笑っていた。 「いや、でも、本当に良かった。君が運び込まれて来た時はかなり危ない状況だったからね。皮肉も言えるほど元気になってくれて嬉しいよ」 「皮肉は言えない方が良かったですか?」 そう返すと唐橋さんは一瞬ポカンとした表情を浮かべ、そしてまた笑う。その姿につられて僕も思わず笑ってしまった。 二人の笑い声が部屋の中を響き渡る。 他愛も無い言葉のやり取り。誰かとの会話。何の変哲も無い側から見れば当たり前の光景。 でもそれは、僕の心をよく分からない感情で一杯にしていくには十分過ぎるくらいだった。
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