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自分という存在
気が付くと、僕は知らない部屋のやたらと固いベッドの上で寝ていた。
ーーーと、言うより、“寝かされていた”、と言う方が正しいのかもしれない。
僕は直ぐにここから出ようとする。
ところが体はピクリとも動かなかった。
(どうなってるんだ?)
体が動かない。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
どうしようもないほどの恐怖が僕の心を支配していくのが分かった。
辛うじて動かせた首を横に向けると、そこには得体の知れない何かが一定のリズムを刻みながら動いているのが見えた。
そして、その得体の知れない物から伸びている紐みたいな物は、僕の体の至る所に繋がれている。
「ーーーアアッ!アアアッ!」
僕の心は恐怖というものに完全に支配される。
何が何だかもう理解が出来なかった。
頭が真っ白になっていく。
「ーーー大丈夫ですか!?」
ガラッ、と勢いよく開け放たれたであろう引き戸が、その勢いを殺しきれずに元の位置へとぶつかる音と共にその人は飛び込んできた。
得体の知れない物の刻んでいたリズムは、いつの間にかその速さを増していく。
そのリズムに僕は何故か今の自分を重ね合わせていた。
「マズい、心拍数が高すぎる!」
何を言っているのかは僕には理解出来ない。
ただ、薄れていく意識の中で誰なのか分からないその人が、随分と慌ただしく誰かを呼んでいるのだけが聞こえていた。
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