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運び込まれた時の僕の体は氷のように凍てつき、顔は振り続ける雪のように白く、何故生きているのか不思議なくらいの状態だったそうだ。
それにも関わらず、穏やかな表情で、まるで布団の中で眠りについているかのような僕を見て唐橋さんは思わずゾッとしたと言う。
「生体反応的には問題はもう無いね。ただ、記憶の方が…」
「…っ」
言葉が、声が、顔が。少しずつ輪郭を失ってボヤけていく。あるいは、気が遠くなるという感じか。
唐橋さんの話を聞いている途中、僕は何度かこのような事に陥る事があった。
何というか、別の何かが流れて来るような感覚。
これも唐橋さんの言っていた《後遺症》と言うものの一部なのか。それは僕には分からない。
ただ、その別の何かが流れ込んでくる感覚は次第に流れを早くして、僕そのものを丸ごと飲み込むようになっていく。
いつもならその辺りで意識というものが戻っていく感じがするのだが、今回は何か違うように思えた。
目の前が真っ暗になる。
そして僕の意識はそこでフッと途切れた。
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