自分という存在

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「『命の危機に晒された時に働く事も』って事は、それ以外にもあるって事だろ?他の要因ってなんなんだ?」 説明する言葉を遮りそう聞く俺に、唐橋は再び戸惑いを見せる。 その短い沈黙と、少々の疑念に俺は腹が立ち、今度は考えるのではなく、口に出してはっきりと言ってやった。 「俺は何かおかしな事を言ったか?」 「…いや、おかしな事は言ってない。その通りだよ昴君」 多少の疑念はやはり残しているものの、唐橋は強い口調に気圧される事もなく、俺の疑問に素直に答える。 しかし、返ってきた言葉は俺の予想していたものとは違った。 「…昴君、と呼んでも良いのかな?」 「…何だ、藪から棒に。俺の名前は竜胆 昴。それはアンタも知ってんだろ。まあ、呼び方はアンタの好きにすれば良い」 跳ね返したとも言える言い方で返す俺の言葉を聞いて、唐橋は何かを察したような顔をする。 それは何とも言えない表情だった。 そして唐橋は再び話し始める。 「…では単刀直入に言う。君は『彼』と違って理解が早そうだからね」 『彼』とは一体誰なのか。そんな疑問がふと頭をよぎる。 でも今はそんな事はどうでも良い。 俺は唐橋の言葉に耳を傾ける。 唐橋もそんな俺を見て言葉を続けた。 「君は多分《|解離性同一性障害》《かいりせいどういつせいしょうがい》と言う病気だ」
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