ゆきのふるよに

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街にはぽつんぽつんと、クリスマスイブの明かりが灯り始めている。 待ち行く人はカップルが大半で、幸せそうに手を繋ぎながら、ウィンドウガラス越しに家具を見つめている。 私は泣きながら上着も着ずに、我を忘れて家を飛び出した。 『あなたはどうしてそうなの、いつも!!』 また些細なことで喧嘩をしてしまったのだ。 わかってるのよ、全部あなたが悪いわけじゃないってこと。 だけど今さら帰れないじゃない。 人目を避けようと大通りを通り過ぎて薄暗い路地に入った時、電柱の下になにか黒いものがのそのそと動いているのが見える。 「なによぅ…」 涙で曇った瞳を凝らして見ると、 猫だ。小さな黒猫だ。 猫はか弱い声で、にゃーと鳴いた。 「あなた、ひとり?」 またしても、猫はにゃーと鳴いた。 どういう風の吹き回しか、私は猫を抱えて近くの公園のベンチに腰掛けた。 夜空からちらちらと粉雪が舞い落ちる。 「お家に帰りたくないわねぇ」 今度は猫は鳴かなかった。
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