1人が本棚に入れています
本棚に追加
街にはぽつんぽつんと、クリスマスイブの明かりが灯り始めている。
待ち行く人はカップルが大半で、幸せそうに手を繋ぎながら、ウィンドウガラス越しに家具を見つめている。
私は泣きながら上着も着ずに、我を忘れて家を飛び出した。
『あなたはどうしてそうなの、いつも!!』
また些細なことで喧嘩をしてしまったのだ。
わかってるのよ、全部あなたが悪いわけじゃないってこと。
だけど今さら帰れないじゃない。
人目を避けようと大通りを通り過ぎて薄暗い路地に入った時、電柱の下になにか黒いものがのそのそと動いているのが見える。
「なによぅ…」
涙で曇った瞳を凝らして見ると、
猫だ。小さな黒猫だ。
猫はか弱い声で、にゃーと鳴いた。
「あなた、ひとり?」
またしても、猫はにゃーと鳴いた。
どういう風の吹き回しか、私は猫を抱えて近くの公園のベンチに腰掛けた。
夜空からちらちらと粉雪が舞い落ちる。
「お家に帰りたくないわねぇ」
今度は猫は鳴かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!