ゆきのふるよに

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何十年前になるだろうか。 クリスマスイブに彼とデートに行った日も、雪が降っていた。公園で待ち合わせをした後、電車に乗ってイルミネーションを見に行ったのだ。 きらめく街路樹に上の空になっているうちに、いつの間にか彼とはぐれて私は半泣きだった。 当時は携帯電話なんて便利なもの、なかったから、知らない街で、1人心細くて、仕方なく駅のプラットホームのベンチに腰掛けた。 ずっと待っていた。 多分ここなら待ってれば彼が来るだろうって。 でもいくら待っても彼は来なかった。 そのうち、雪が降ってきて、電車に乗る人でプラットホームはあふれて、私は仕方なく駅の自販機の横にしゃがみこんだ。 しゃがみこんだ途端、涙がこぼれて止まらなかった。 『どこにいったのよぅ…』 幸せに満ちたプラットホームの中で、私だけが場違いだ。 電車が発車する度に、駅員さんが気の毒そうに私のことを見たけれど、私はうつむいてじっとしているだけだった。 『お姉さん』 ふと呼ばれて顔をあげると、頬に暖かなブラックコーヒーの缶を押し当てられる。 黒いチェスターコートを羽織ったハンサムな青年だった。 『メリークリスマス』 涙目をこすりもう一度顔をあげると、そこには青年の姿はもうなかった。そのかわり、プラットホームの階段を駆け足で降りてくる彼の姿が見えた。 『ごめん』 きつく、暖かく抱きしめられ、緊張がほろりと溶けて体中から力が抜けていく。 『もうはなさないから。ずっと一緒にいよう』
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