#五月の夜

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#五月の夜

そしてゴールデンウイークも終わり、ある晴れた日のこと、 ♪ピコピコピコ メールを受信するケータイのメロディが流れた・・・・・・。 「誰だろう。」 どうせ仕事仲間の連絡だろうなと思って画面を開いた。すると、 「キョウスケさんへ」というタイトル。 今時誰だ?若葉なら、ボクを呼ぶときはキョウちゃんだ。ヒデさんなら呼び捨てだ。もしかして、と思いメールの中を開く。 「萌愛です。ゴールデンウイークの間、一度も来てくれませんでしたね。今度はいつ来てくれるんですか。」 と書いてある。まさしく、キャバ嬢の営業メールである。思わせぶりだが実にストレートな言い方だ。 もしボクが若葉嬢との辛い出来事がなく、普通に指名嬢を乗り換えただけだったら、間違いなく速攻で店に足を運んだことだろう。 ところが、ボクの胸中はとてつもなく傷んでいたので、しばらくの間は萌愛からのメールを放置しておいた。 「いずれ彼女も忘れるさ。ボクも思い出さなくて済むし、誰も傷つかなくていいよね。」 そう思っていた。 五月も中旬を過ぎ、五月晴れと呼ばれる日が増えてきた頃、先輩であるヒデさんから飲み会のお誘いを受けた。断る筋合もないので、仕事終わりの十九時を待ち合わせにしていつもの歓楽街へ足を運んだ。 この日も定番の焼き鳥と変り種のお好み焼きでビールをあおる。まだまだダイエット真っ最中のボクは、あまり飲み過ぎず、もちろん食べ過ぎず、色々と控えていた。 「キョウスケ、なんだかあんまり箸もビールも進んでないねえ。まだ恋煩い継続中か。」 「そうですね。さすがにピークは過ぎたけど、折角の恋煩いで痩せたのだから、ダイエットだけは継続しようと思ってますよ。」 などと冗談を交わしながら、息の合う仲間との歓談は進む。 「それはそうと、先輩のパートナーとはうまくいってるのですか。」 「オレの方はキョウスケと違って一途じゃないので、いなけりゃいないで他の女の子と適当に遊んでるよ。」 このあたりは流石である。ボクよりも一枚も二枚も上手である。 ボクなんかはたった一人に翻弄されて、今も暗闇の中をさまよっているのだから。 やがて夜の戸張は下りてゆき、エンディングのパーツを探すタイミングとなる。ヒデさんは今日も例のところへ行くのだろう。 「キョウスケ、もう前の女の子の事は忘れて、いや忘れるために一緒に行こう。」
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