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ある日のこと、カバンをガサゴソしている時だった。
鍵を開けていないのに扉が開いた。
(誰か外出かな?珍しい)と思いながら扉のほうを見るといつも出会う少女が立っていた。
周りを見回すけれど、母親の姿はない。
「こんばんは、お母さんはどうしたの?」
私の問いに少女は答えない。
泣きそうな顔で首を振ると、少女はおもむろに私の手を握ってきた。
「もしかして、カギを忘れたからお家に帰れないのかな?」
このマンションは面倒な事に、エントランスだけではなく、エレベーターに乗る為にもカードキーをかざさなくてはいけないのだ。
少女は悲しそうな顔をしてコクンと頷いた。
「じゃあ、お姉さんと一緒にいこうか。」
またコクンと頷く少女。いつもの笑顔が見られないのは残念だなぁと思いながら、手を繋いでエレベーターに乗り込み、4階のボタンを押した。
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