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たった4階分の時間なのに、
少女が悲しそうな顔で、ただ前を見つめていつもの交流がないことで、とても長い時間に感じてしまう。
(プレゼントをくれるけど、話したことはなかったし、きっと恥ずかしがり屋さんなんだよね)
少しの違和感を振り払うように、笑顔を向けるけれど、少女は私の方を見ようともしなかった。
短いけれど長い時間がすぎ、4階の扉が開くと、いつもバイバイしながら降りていくはずの少女が、繋いだ手を離さず、グイグイ引っ張ってきた。
「どうしたの?貴方のお家はこの階だよ?マンションの中は安全だから早くお家にかえろうね」
私はそう言うと、仕事の疲れもあって、少女の背をそっと押し出して閉めるボタンを押した。
(あの子には悪いけど、家にはお母さんもいるだろうし、面倒みきれないや)
エレベーターがゆっくり上昇する。
窓の隙間からチラリと見えた少女は、悲しそうな顔で私を見つめていた。
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