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次の日もその次の日も少女はエントランスの中から現れて私の手を握って、エレベーターから降ろそうとするように、グイグイ引っ張ってきた。
少女は何を話しかけても答えず、ただ無言で悲しそうな顔をして私を引っ張る。
(なんだか怖いな。お母さん何してるんだろう。ちゃんと子供を見ててよね。私だって疲れてるのに。)
そんなことを考えながら、家に一人で帰るように諭しながら、背中を押してエレベーターから少女を下ろす日が続いた。
4日目になった時、私はようやく決定的な違和感に気づいた。
少女の着ている服が毎日同じものなのだ。
今までは、毎日清潔に洗濯された可愛らしい洋服を着ていたのに。
「もしかして、お母さんの具合がわるいのかな?お家に来て欲しいのはそのためかな?」
そうたずねると少女はパッと笑顔になって私の手を一層強く引いて来た。
「何かあったら嫌だし、ちょっと様子を見にいくか」
私は少女に連れられて4階の扉を降りた。
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