1 生命の本

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ふらふらとちからなく黄泉(よみ)の森の中を徘徊(はいかい)する亡者(もうじゃ)のように、冷え切った足取(あしど)りは進みゆくほどに重くなる。 何処(どこ)までも続く無限(むげん)の迷路に入り込んだように(なが)く、遠く。楽土(らくど)への道は歩くたび遠ざかる。 私はきっといつの間にか、冥界(めいかい)に入り込んでしまったのだ。そう思い込めたらどれほど気が楽だろう…… 歓迎(かんげい)できない妄想(もうそう)が私の思考(しこう)を支配して頭の中に入り(みだ)れる。 「(いた)い!」 先刻の竜巻(たつまき)に飛ばされて落ちた小枝だろうか? 思い切り(かた)い何かを()みつけてしまった。 どうしてこんな目に()わなければならないのだろう。普通(ふつう)ならこうしたときに、はっと自然に目が覚めたりするものなのに……余程(よほど)眠りが深いのだろうか全く目覚める気配も無い。 長年のデスクワークで甘やかされた私の(やわ)らかい足の裏には、じんわりと赤い血液が染み出している。
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