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「う うう?……。 ……。 ……く っすぐっ……たい!」
(何?)
何か、暖かくてふわふわとしたものが、近づいてきて私の頬を舐めた。
『くうん くん くん』
アポイントも取らずにいきなりやって来たそいつは、自分の話せる唯一の言語で私に向かって挨拶をした。
むくむくの……子犬? レトリーバー? ?
「でっ……かい!」
『わふ わっふ』
フレンドリーで遠慮のないそいつは、尻餅をついている私の鼻面に悠々届く巨体にも関わらずあどけない子犬の造形をした不思議な生き物だった。
「こら。もう、やめなさい」
楽しそうに尻尾を振りながら私の鼻を舐めてくる子犬(?)を、どうにかして落ち着かせた私は、すぐ足元に柔らかそうな毛布が落ちていることに気付いて取り上げた。
「あら、もしかして持ってきてくれたの?」
ところどころ犬の毛が付着した毛布を自分の身体に巻きつけながら、私はなおも纏わりついて挨拶を続けようとする子犬に対して、自分に都合の良い情況解釈から来る親愛の情を示した。
『くん くうん くん』
突然現れた奇妙な大きい子犬は、まるで子供の頃飼っていた愛犬のように常に私へ顔を向けながら、冷えた身体が温まるまで私の傍に寄り添ってくれた。
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